荼毘にふされた母は永遠の仏に

古ぼけた焼き場での荼毘は母がかわいそうだ

地元の慣習で火葬が先に行われた。
火葬場は民家から少し離れた、緑が鬱蒼と生い茂る小高い山の中腹にある。
古ぼけた小さな建物には、うさんくさい老人が火夫として務めていた。
公害問題が騒がれるなか、ガスバーナーで煙の出ない火葬が行われる近年の荼毘と違い、
ここではいまだに重油と薪を可燃材料として稼動している。

「それではこれより火葬をとりおこないます。喪主さんはこちらへどうぞ」
と案内された裏手の焚口には、薪と紙が用意されていた。
「これに火をつけて点火してください」
粗雑なつくりの釜に点火しながら、
「母さん成仏してくれよ。これまで育ててくれてありがとう」
次第に目頭が熱くなり、母の思い出が通りすぎてゆく。
これで母の姿はこの世から消え去り、あの世で生き返るのか。

約1時間の火葬の間、参列いただいた兄弟親戚は少し離れた休憩所で
思い思いに談笑している。お菓子や飲み物を食べながら、それぞれの近況を語り合っていた。
普段会えない親戚同士も、このときは交遊に興じている。
92歳で大往生した母の死を、だれも悲しんでいる様子はない。
むしろ92歳の死は悲しみではなく、お祝いだという慣わしなのだろうか。
なんで親の死を一緒に悲しんでくれないんだ、と葛藤する。

骨上げされた収骨容器を抱いてみると軽い。これが元気だった頃の母の姿なのだろうか。
「軽くなってしまったね。家まで連れて行くからね。そこでゆっくり休むんだよ」
小さい頃母に手を連れられて田舎の畦道を歩いたあの頃と同じように、
母を胸に抱いて、終焉(つい)の住家まで連れて行った。
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