92歳が見せた生への執念

体調が回復したら我が家に戻るつもりだった


当時、5月の連休を利用して母の見舞いに行った。
ベッドに横たわる母は、やつれ、痩せ細っていた。
でも想像していたよりも元気だ。気持ちもしっかりしている。
まずは一安心だった。


本人は体調が回復したら退院するつもりでいるようだ。
無理もない。入院生活は健康な人でも気が滅入る。


入院時に着てきた外出着は厚手なので、陽気がよくなった今は
薄手の衣類が必要だから、家から持ってきてくれという。
花が咲きほころぶこの時期に、退院を楽しみにしている母の気持ちを見ると、
何か言い知れない悲しさを感じ、思わず目頭が熱くなる。
本当のことをいえない後ろめたさ。

自分が幼少の頃、母との思い出が走馬灯のように駆け巡る。
許されることなら気持ちを汲んで、住み慣れた我が家に連れて帰り、
畳の上で最期を迎えさせたら、どれだけ気持ちが安まるだろうか。

けど現実的には無理だ。自力では立って歩けない。トイレも1人ではできない。
時どき苦痛を伴うのはポリープのせいだと思っている。
そして毎晩妄想的な夢を見ている。

時間的観念が薄れているのか、夢と昔の記憶が錯綜している。
聞いていてつじつまを合わせようと言葉尻を手繰り寄せるが、理解できないこともある。
人はこのことをボケと言っているが、自分から見ればこれはボケとは思えない。
単に時間的ズレがあるだけのように思える。

その辺りは母自身でも自覚しているのかもしれないが、だからこそやるせない。
ただ本人の生への執念は、周りの患者と比較すると強いものを持っているようだ。
明日をも知れない命とは思えなかった。
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